転生公女はバルコニー菜園に勤しむ

 ルースに手を引かれ、アークロイドと一緒に岸に上がった後。
 シャーリィは遊歩道から少し道をそれて、滝の上に行く坂道を上っていった。水しぶきの音がどんどん近づいてくる。

「……どこまで行くんだ?」
「もう少しですよ。この坂を上ったところが絶景ポイントなんです」

 坂の先には視界が開けていて、ちょうど滝が見下ろせる位置だ。
 ザァァッという豪快な水の音とともに、滝壺へと流れ込んでいる。高さは五メートルほど。苔むした岩肌がのぞき、その滝の周囲にはきらきらと輝く水晶が連なっている。

「どうです? 見るも圧巻な、水晶の滝です」
「……言葉が出てこないな。こんなに幻想的な光景があるとは思っていなかった」

 感心したような響きに、シャーリィの自尊心も満足した。

「本来はあの遊歩道から見上げる形なのですが、今日は貸し切りなので、特別にご案内いたしました。いつもはこちらは立ち入り禁止なんですよ」
「しかし、虹色に輝く水晶がこれほど揃っているとは……。ここは昔からこうなのか?」

 真下を見下ろしながら、アークロイドが興味深そうに周囲を見ている。その後ろで、ルースが主が落ちないか、ハラハラした様子で見守っていた。

「昔はここは普通の滝だったそうです。水晶ができたのは魔木の影響だと考えられています。長い年月をかけて作られるものが、潤沢な魔力によって結晶化したのではないかと」
「なるほど、魔木の影響か」
「魔木のせいで他の植物は育たなくなってしまいましたが、このように副産物もあります」
「……ふむ。今度は下からの眺めも見てみたい」
「承知しました。帰りは下り坂ですから、足元にご注意ください」

 来た道を戻り、正規のルートで水晶の滝の前までやって来る。
 高低差のある滝は幾筋にも分かれた細い流れが多くでき、すだれ状に流れ落ちている。滝壺を囲むようにして水晶がそびえ立ち、水しぶきを浴びた水晶がきらきらと輝く。
 先ほど立っていた崖の上は、地上からではよく見えない。

「やはり、滝の上からの眺めとは違うな。ルースもこういう景色を見ると、描きたくなるんじゃないのか?」
「……ルース様は絵を描かれるのですか?」