転生公女はバルコニー菜園に勤しむ

「なっ、まさか知らずに来たんですか?」
「興味がなかった」

 素直なコメントに、シャーリィはうなだれた。

「……仕方ありませんね。レファンヌ公国の目玉ツアーは主に三つあります。その一、おとぼけ大公の温泉ツアー。その二、大公妃の美女侍らせツアー。その三、公女のお腹いっぱいグルメツアーです!」
「…………」

 アークロイドだけでなく、ルースも憮然とした表情になっている。
 無言の反応にシャーリィは口を尖らす。

「あ、なんですか。結構人気なんですよ、予約客でいっぱいになるくらい」
「いや、そのネーミングセンスはどうなんだと思っただけだ」
「わかってないですね。一言で内容がイメージできるようにするのが、お客様の心をつかむコツです」
「……大公の威厳がなくなる気がするのは俺だけだろうか……」
「庶民的なほうが、身近に感じられるでしょう? 語り口がくすりと笑えるって、一番人気なんですからね」

 国のトップである大公が庶民感覚で仕事をしている国は、世界中探してもうちぐらいだろう。けれど、昔からそういう風に育ってきたお国柄なので、今さら他の国のように振る舞っても違和感しかない。

「まあ、でも……そうだな。王族が庶民に近い立場にいることで、得られる信頼もあるのだろうな」
「民と助け合ってこそ、今のレファンヌ公国がありますからね。民の声をじかに聞き、問題点を早期解決することがうちの売りです」
「これで人手不足が解消できれば御の字だろうがな」
「……それを言わないでください……」

 和気あいあいとやっているが、富や夢を追いかけて国外に出る若者は依然として多い。貧乏小国は魅力半減と思われるのはこの際、致し方ない。

「いっそ、トルヴァータ帝国からの移住プランを作成するっていうのはどうですかね?」
「帝国民はやらんぞ」
「うう、言ってみただけです……」

 本気で落ち込んでいると、「そう落胆するな。まだ希望は残っていると思うぞ」と慰めの声が降ってきた。