シーツの洗濯は腰を痛めていた従業員が復帰したので任せ、消耗品の在庫チェックをしながら館内を歩く。
廊下の中央で、電球が切れかかっている場所を見つけ、脚立を持ってくる。よいしょっと設置するが、どうも据わりが悪い。左右に動かすと、ガタつきがある。これは、そろそろ交換が必要かもしれない。
どうしようかと唸っていると、後ろから声がかかる。
「そんなところで、どうしたんだ?」
「……アークロイド殿下。おはようございます」
館内の部屋着姿が馴染んだアークロイドは不可解そうに目を細め、シャーリィは簡潔に状況説明をする。
「電球が切れそうなので交換するところでした」
「それは従業員の仕事なのではないか?」
「わたくしも従業員でございます。館内のメンテナンスは気づいた者が行うルールですので」
「なるほど。ここでは、公女と民の区別はほとんどないのだったな」
納得したように頷き、アークロイドが語を継ぐ。
「貸せ。子どもに無理はさせられない」
手を差し出され、シャーリィは目を瞠る。子どもではないという反論をグッと飲み込んで、低姿勢で腰を折る。
「……せっかくのご厚意ですが、お客様にそんなことは頼めません」
「その脚立は古いのだろう? 無理して怪我をすれば、仕事に差し障りがあるのではないか? それに俺は今、暇を持て余している。少し手を貸すくらい、なんともない」
口を閉じると、後ろについていたルースと目が合う。小さく頷きが返ってきて、この行動は珍しくないのだということがわかる。
(本当はだめなんだけど、頼んでもいいかな?)
このまま押し問答する時間がもったいない。シャーリィは心を決め、口を開く。
「では、お言葉に甘えてさせていただきます。お願いできますか?」
「任せろ」
シャーリィが脚立を押さえている間に、アークロイドがギシギシと音を鳴らして脚立の上にあがり、古い電球をくるくると回す。
「……お前は何か夢はあるか?」
古い電球を渡すついでに言われ、シャーリィは新しい電球を渡しながら眉根を寄せる。
「何ですか、急に」
「これだけ仕事に精力的に取り組んでいても、一応、お前も公女だろ」
「正真正銘の公女です」
廊下の中央で、電球が切れかかっている場所を見つけ、脚立を持ってくる。よいしょっと設置するが、どうも据わりが悪い。左右に動かすと、ガタつきがある。これは、そろそろ交換が必要かもしれない。
どうしようかと唸っていると、後ろから声がかかる。
「そんなところで、どうしたんだ?」
「……アークロイド殿下。おはようございます」
館内の部屋着姿が馴染んだアークロイドは不可解そうに目を細め、シャーリィは簡潔に状況説明をする。
「電球が切れそうなので交換するところでした」
「それは従業員の仕事なのではないか?」
「わたくしも従業員でございます。館内のメンテナンスは気づいた者が行うルールですので」
「なるほど。ここでは、公女と民の区別はほとんどないのだったな」
納得したように頷き、アークロイドが語を継ぐ。
「貸せ。子どもに無理はさせられない」
手を差し出され、シャーリィは目を瞠る。子どもではないという反論をグッと飲み込んで、低姿勢で腰を折る。
「……せっかくのご厚意ですが、お客様にそんなことは頼めません」
「その脚立は古いのだろう? 無理して怪我をすれば、仕事に差し障りがあるのではないか? それに俺は今、暇を持て余している。少し手を貸すくらい、なんともない」
口を閉じると、後ろについていたルースと目が合う。小さく頷きが返ってきて、この行動は珍しくないのだということがわかる。
(本当はだめなんだけど、頼んでもいいかな?)
このまま押し問答する時間がもったいない。シャーリィは心を決め、口を開く。
「では、お言葉に甘えてさせていただきます。お願いできますか?」
「任せろ」
シャーリィが脚立を押さえている間に、アークロイドがギシギシと音を鳴らして脚立の上にあがり、古い電球をくるくると回す。
「……お前は何か夢はあるか?」
古い電球を渡すついでに言われ、シャーリィは新しい電球を渡しながら眉根を寄せる。
「何ですか、急に」
「これだけ仕事に精力的に取り組んでいても、一応、お前も公女だろ」
「正真正銘の公女です」



