アタシがアンタを好きになるなんて絶対にあり得ない


「え、……何を言ってるの?」

にこ、と微笑んだまま天澄は固まった。

「アンタがあんまり甘いお菓子を食べないこととか、知ってるんだから」

文化祭の準備で用意されていたお菓子はほとんどが甘いもので、飲み物もほとんどジュースだった。みんながそれを食べていくのに、天澄はあんまり食べていないことを、アタシは気付いてた。

天澄が甘いお菓子を食べたり、ジュースを飲んだりするのは、誰かが用意した時だけ。それに、そのお菓子やジュースにもあまり口を付けてなかった。

それなのに、甘い塊としか言いようのないパフェを頼むなんて、どう考えてもおかしい。

「……そこまで言うなら、今回は遠慮しておこうかな」

微笑んだまま、天澄はそう言って手を引いた。動揺を隠したような、そんな感じがした。

会計は、初めに宣言したように、全額を天澄が持ってくれた。チラッと見えた財布には結構な額が入っていたので、やっぱり高いやつを選んどけばよかったかな、とか少し思った。

ファミレスを出ると、外は随分と暗くなっていた。

「今日はありがとう。また一緒に色々なところに行こうね」

と、天澄が言うので、

「そうだね、そんな機会があればね」

と、返した。その返事に天澄は少し困ったような、戸惑ったような変な顔をする。……思っていた反応と違う、って感じか。

「暗いし、家の近くまで送るよ」

それを隠すように、天澄は提案をする。

「家の方向とか違うだろ」

とか聞いてみたけれど、

「多分、ほとんど一緒だと思うよ。登校してる姿見たことあるし」

そう言うのでせっかくだからその好意に甘えることにした。というか『登校してる姿見たことある』って何?普通にびっくりというか気持ち悪い言葉が出てきてそれにびっくりした。

家の近くまで来たので、ここで十分だと言って別れることにした。なんかあんまりアタシの自宅を知られたくない気持ちの方が大きかった。

「じゃあ、またね」

なんて天澄がいうので、

「付き合ったわよ、『ご飯を食べに』ね」

そう答えてやったら、天澄は驚いたように目を見開いた。ほらね、やっぱり。