湊side




こっくりこっくり。

こたつの温かさにそいつの睡魔はもう目の前。



「柚ちゃん、眠いなら無理しなくていいのよ」


「そうだぞ。毎年大晦日に限って寝てしまうからなぁ柚は」


「───ハッ!大丈夫!今年こそは起きてるときに年越したいから!」



蕎麦を食べて、大晦日の特番からは演歌が流れている。

そんなゆったりした音楽が逆に眠気を誘っちゃうんじゃないの。


俺は手にしていたみかんを剥いて、そいつの口へひょいっと入れた。



「んっ、おいしっ」


「あと20分だから頑張れ柚」


「うんっ」



俺の隣でとろけるような笑顔を見せて、そのまま突っ伏す勢いだけど。

それでも自力で耐えようとしている姿がどこか可愛くて面白い。


ようやくカウントダウンが始まった。



「おーい柚。…駄目だ父さん、完全に夢の中」


「惜しかったなぁ。夢の中では起きてるつもりなんだろうな」



その寝顔を見つめると、起きてる3人は柔らかく笑った。

幸せそうな顔してるし…。

その頬をつついて伸ばしてみても全然起きない。


そんなことしてるうちに、外からは鐘の音がゴーンと遠くから響いた。