俺がまさかこんなこと言うなんて。

ごめん父さん。

受け取り方によっては、俺達は父さんを利用したようにも聞こえるかもしれない。


でも俺は今、毎日が楽しいんだよ。



「うんっ!私もお兄ちゃんと全部同じだよ!」



俺はブランコ脇のベンチから立ち上がって、そいつの背中に回った。


柔い背中をトンッと押して前へ差し出す。

次はもう少し強めに押して、また次はその倍。



「わっ、待って…!ラーメン食べたばっかなの私…っ!」


「はい、せーの」


「ちょっ、わぁぁぁっ!」



ふわっと夜風が俺達を包む。


それは穏やかで優しい風だった。

夏なのに涼しくて、心地いい。



「わぁ見てっ!これカブトムシじゃない!?」


「柚ストップ。それ以上近付いたら許さないから」


「あれぇ、もしかしてお兄ちゃんこういうの苦手?ほれほれほれ」