湯気の立つ厨房が見えるデシャップ付近、バッシングを終えた羽川(はねかわ)さんは私に笑いかけた。
この人はいわば私の教育係みたいなもので、初勤務日から仕事を付きっきりで教えてくれた人だった。
一言で表すならば、一見堅物に見えるけれど話しやすい大学生のお兄さんって感じ。
「柚、これ8番テーブル」
「あ、はいっ」
そして“柚”と、初日から名前を呼んだ2人目だった。
羽川さんは他店舗で働いていたという経験者。
大学の長い夏休み、ほぼ毎日バイトを入れているという店長お気に入りの1人で。
だからこそ私が勤務する日に決まって入ってるから、私の教育係に自然と任命されていた形だ。



