可愛いものを付けてみたいとか、お金を貯めて可愛い服を買ってみたいとか。
そう思う気持ちって高校生になれば誰だって出てくると思う。
きっとそうやってみんな大人に変わっていくのです。
「よしっ、採用!」
「本当ですか!?」
「柚ちゃんいい子そうだし、仕事覚えるのも早そうだし、なにより笑顔が素敵だ!」
「ありがとうございますっ!頑張りますっ!!」
初めての面接は店長さんの人柄の良さに、その場で決まってしまった。
兄のおかげでテストも50点以下がなく、るんるん気分で夏休みを迎えたわけなのだが。
「柚ちゃん、湊に夜食持って行ってもらえる?」
「はーいっ」
お母さんにだけはバイトすると伝えてある。
お兄ちゃんには秘密で!と、もちろん口止めは完璧だ。
勉強机に向き直ってるだろう兄の部屋の前、ノックをしようとした手が止まった。
「あぁ、もうあんま会えないかも。俺受験あるしさ、それにこういうのはもうやめたいんだよね」
電話してるみたい…。
どうしよう、また少し時間置いてからにした方が良さそうかな。
「はいはい、…好きだよ」
そんないい加減な返しだったけど、確かに彼はそう言った。
電話の先はたぶん、前に家に来てた人なんじゃないかと思う。
……勘でしかないけど。



