高校まではずっと
 沖縄本島の南西20kmの海にポツンと浮かぶ
    周囲もわずか15kmしかない



   寂しいだけの何もない島で育った。



「もしもし」
「ごめん、こんな夜更(よふ)けに。寝てた?」



電話の声の主は貴方ではなく花村雫(はなむらしずく)


高校を卒業して東京女子外語大に進学した。
  それは高3の春に島を出て行った准が
   横浜にいると風の便りで聞いた。


     ただそれだけの理由。


   少しでも准の近くにいたかった。


 それなのに彼の消息が分かることもないまま
  大学を卒業して就職した小さな旅行代理店。
   そこで仲良くなった同僚が雫だった。