、、、気付くと、また図書室にいる。
さっきと全く同じ位置関係の所に、笹宮月
乃が座っている。
今度は、どっちも本を持っていない。
笹宮のまんまる大きい目が、興味しんしん
にこっちを向いている。
「ねえ、」
やや高いトーンで話しかけられる。
「毎日ここに来るの?今日も明日も来
る?」
「うん、ほとんど毎日ね。他に行く所無い
し。」
すると、やんわりと微笑みを返す。
「また会うかもね。この席にまた座って
ね。この本の話とか、いろいろしたい。」
「え、ああ、良いけど、、」
「あ、でも、教室では控えてね。」
「え、うん、分かった。」
すると、彼女の微笑みはいっそう明るくな
って、それと同時にどんどん回りがぼんや
りとしてくる。
「ジリジリジリジリ!」
目覚ましが鳴った。夢だと気付いた。
「ふわぁ。」
急いで支度をして通学路を急ぐ。
その日も、教室に入ったら、自分の席の近
くに陽キャ達の輪が出来ている。
その中心に、華やかな笑顔の笹宮もいる。
本当に、自分は、つい何時間か前までこの
子と図書室でひと言、ふた言とはいえ言葉
を交わしていたのだろうか、、、
今、クラスの時の人となっている、この女
性徒と。
ほとんどの女子、男子が、この子の事が気
になって、少し話してみようと思って近づ
いているのに、それを自分みたいな者が全
く意識せずに達成してしまったのだ。
でも、今は、どれだけ近づこうとも、距離
は遠かった。
ふと、夕べに出てきた笹宮の台詞が蘇る。
(教室では、控えてね。)
ジンクスや理屈のない占いは信じる質では
ないが、あの夢に出てきた彼女の台詞が彼
女の本当の意思だとしたら、、、
(本の話とか、色々したい。)
だとしたら、自分はまた、この人気転校生
と、教室でなくともまたかなりの確率で話
が出来るのだろうか。
そんな事があるかもしれない、いやあるわ
けがないと色々思いながら、授業を受けて
いた。
夕べは見た夢を鮮明に覚えるくらい眠りが
浅かったからか、眠気の波が何度も襲って
きた。気付くとうたた寝している事が何回
かあった。
だが、あの夢は忘れていたくなかった。覚
えていて良かったと何故か思っていた。
帰り際、こんな声が耳に入った。

