そして一緒に紗弓の部屋に入る。


いつも奇麗に整理整頓されているその部屋は、今日はあちこちにティッシュが散らばっていた。


真ん中の丸いテーブルの上に買ってきたものを置き、今だ抱きついている紗弓を見下ろす。


「ずっと泣いてたの?」


聞くと紗弓はあたしの胸の中でコクコクと頷いた。


それはまるで幼い少女のようで、あたしは紗弓の体をギュッと強く抱きしめた。


「なにがあったの?」


聞くと、紗弓はようやく顔をあげた。


その目は濡れていて、充血している。


ずっと泣いていたというから、まぶたも重たそうだ。


「あのね、大智がね……」


大智というのは紗弓の彼氏だと、話しを聞いて知っていた。


紗弓は大智と同じ高校に入学するために、頑張って勉強をしてきたのだ。


そんな話を聞いて、少しだけ嫉妬したことを思い出す。


紗弓の一番の親友は自分だけれど、紗弓にはそれよりももっと大切な彼氏がいる。


それが悔しく感じられた。


「別れたの」


「え?」


「だから、大智は里奈に乗り換えて、あたしたち別れたの」