あたしは2度、ノックした。


「ご飯はいらないってば」


中からくぐもった紗弓の声が返ってきた。


泣いていたのか、その声は濡れている。


一瞬胸がチクリと痛むのを感じた。


紗弓になにがあったのか、早く知らなければと思う。


「紗弓、あたし景子だよ。今日学校に来なかったから、様子を見にきた」


そう言うと、中からゴトゴトと物音が聞こえてきた。


そしてゆっくりとドアが開かれる。


「よっ」


あたしはわざと明るい口調で言い、買い物袋を掲げて見せた。


その瞬間だった。


紗弓はワッと泣き出してあたしの胸に飛び込んできたのだ。


あたしはよろけながらも、どうにか紗弓の体を抱きとめた。