里奈のことは前からいいなって思っていたんだ。


1年生の頃から際立って美人だったし、少しくらい近づけないかなって。


でも、そんな里奈をほっておく男なんていない。


里奈はあっという間に学校中の人気者になった。


俺と里奈では住んでいる時限が違うのだと感じることも多々あった。


「里奈の彼氏って大智だろ」


友人からそう聞いた時、俺は「あー……そうなんだ」としか言えなかった。


里奈への気持ちはあったけれど、あれだけの高値の花を自分のものにできるなんて思っていなかったから。


でも、少し意外だった。


大智は確かにイケメンだけれど、もっとカッコイイヤツは他にもいた。


里奈がもし顔じゃなくて性格で大智を選んだのだとしたら?


その場合、もしかしたら俺にもチャンスはあるかもしれない。


そんなことを考えて、俺はトイレの鏡で自分の顔をチェックする。


少し鬚が生えてきている。


朝沿っても、夕方になるとうっすら出てくるのだ。