あなたの願い、残酷に叶えます。

あたしがやっていないことはみんなわかっているはずだ。


だって、あたしが登校してきたとき、すでに猫はここにいたんだから。


「うわ、キモ」


紗弓がさげすんだ声で言う。


「さすがにあれはないよね」


景子が言う。


あんたたち2人がやったんでしょう!?


そう言いたくても、言えなかった。


友達がいないから。


誰も味方をしてくれないから。


声をあげる勇気が湧いてこない。


「今日、変質者が学校に入り込んだらしいぞ!」


嫌な雰囲気を払しょくするようにそんな声が聞こえてきて、振り向いた。


教室の後方のドアに充男が立っている。


充男は肩で呼吸をしていて、早く情報をみんなに伝えようとしている。


「変質者?」


麻子が聞く。


「あぁ。だからそれ、ちょっとそのままにしてくれって先生に言われた」


充男があたしの机を指差して言う。


「なに? 先生ももう把握してることだったの?」


「なんだ、そうだったんだ」


あちこちから納得の声が聞こえてきて、話しの中心は変質者へと変わっていく。


あたしはホッとして、泣きそうになってしまったのだった。