俺、まだ夢でも見てるのか?


そう思いながら草木の匂いに誘われるようにして外へ出た。


踏みしめる地面は柔らかくて、腐葉土でできているのがわかった。


途端に後方でバタンッと玄関が閉まる音がした。


息を飲んで振り向くと、あったはずの家がない。


「なんだ? どうして?」


忽然と消えた我が家に脳内は混乱する。


ここはどこだ?


どうして家が消えたんだ?


だんだん自分の呼吸が荒くなってくるのがわかった。


なにかとんでもないものに巻き込まれてしまっている気がする。


すぐに帰らなきゃ。


家に帰らなきゃ。


そう思って足を進める。


歩きなれない山道に、何度も転んでしまいそうになりながら前に進む。


どこまで行けば街に出られるんだろう?


踏みしめる足は次第にダルくなっていく。