「なにそれ、いい人なの?」


「そうじゃなくてさ、残酷に願いを叶えるんだって」


「はぁ?」


「願うのは普通の願いじゃダメなの。誰かを苦しめたいとか、誰かを殺したいとか、そう言った願いなんだよ」


「そういう願いじゃなきゃ、きいてもらえないの?」


「そうみたい! みんな、残酷様って呼んでるよ」


残酷様。


それがアザミのもう1つの名前になった。


最初は噂を作るのが好きな子が言い始めたことだった。


残酷様は残酷に願いを叶えてくれる神様だ。


やがてその話に尾ひれがついた。


残酷様を呼び出す儀式があるんだって。


白い紙に血文字で『残酷様おこしください』って書くの。


儀式だって最初はこれだけだった。


しかし、来てもらったら帰ってもらわないといけないんじゃないの?


誰かがそう言いだした。


それもそうだね。


じゃあ考えようよ。


残酷様を帰す方法。


残酷様なんだからそう簡単には帰ってくれないよね。