「昔この村で惨殺事件があったの知ってる?」


それは通学途中の電車の中の風景だった。


「知ってるよ。すごく有名じゃん」


「100人を全員殺したんだってね。しかも犯人は女だったって」


少女たちは好奇いっぱいの表情で昔話を語る。


アザミの名前も知らない子たちは、アザミを可哀そうだと言いながら、それでも怖いと話を続ける。


「それでさ、その女の人が元になった都市伝説があってね」


話しは急に変化する。


200年前、アザミが生きていた時代にはなかった話しになる。


「村人を全員殺した女を呼び出して、願いを叶えてもらうことができるんだって」


そんなもの、アザミは知らない。


だってアザミは人間だから。


人間として村人を殺し、そして自殺した。


そんなアザミは神様とは違う。


願いを叶える力なんて、もっていない。