首にツルを通す。


ちゃんとやれるかな。


千切れたりしないかな。


そんな不安は杞憂だった。


そのツルはとても頑丈で、クワの柄から足を外したあたしの体を簡単に受け止めてくれた。


グッと首が締まる。


一瞬頭は真っ白になる。


次に妹の顔が浮かんできた。


あたしがこの手で首を絞めて殺した妹。


次に兄の顔が浮かんできた。


あたしを本物の妹と変わらず可愛がってくれた兄。


そして女と男。


あたしを愛し、育ててくれた2人。


あの愛情は本物だったのか、嘘だったのか、今ではもうわからない。


殺す前に聞いておくべきだったかもしれない。


そう思ったが、その考えはすぐに打ち消した。


いや、聞かなくてよかったんだ。


真実を知らないから、あたしは今こうして懐かしい記憶と共に逝こうとしているのだから。


それはほんの短い時間。


呼吸が止まるまでの時間に、色々な顔が浮かんできては消えていった。


それはみんな村の人たちの顔だった。


怒ったり泣いたり笑ったり。


どれもが暖かくて懐かしかった。


あぁ……あたしはやっとこの村に帰ってきたんだね。


そんな気がして……意識は白くかすんで……消えた。