あの時の俺は里奈のことしか頭になくて、紗弓に対して申し訳ないなとかって感情はなかった。


ただ里奈と一緒に歩けることが嬉しかった。


優越感に浸ることもできた。


だから、紗弓があのときどれだけ悲しい気持ちになったのか、このときはじめて理解した。


もしかしたら紗弓は俺のことを殺したいと恨んだかもしれない。


もしそうだとしても、文句なんて言えない。


そうだよなぁとしか、言えない。


里奈を別れたことを紗弓が知っているのかどうかもわからないまま、3年生になった。


紗弓とは相変わらず会話していないし、里奈とは目を合わせることもなくなった。


ただ思うのは、最近紗弓は奇麗になった。


その変化にどうしてか俺は戸惑い、そして焦りを感じていた。


もしかして新しい彼氏ができたんだろうか?


女が奇麗になるときと言えば、男が絡んでいる。


人生経験の浅い俺は、単純にそんな風に考えた。


別に紗弓に彼氏がいたって問題ないはずだ。


でも、俺と別れた時あんなに悲しんでいたのにと、思ってしまう。


それはたぶん、俺の傲慢さだ。


紗弓にそんなことを言えば、いつの話をしているのだと笑われてしまいそうだった。