ザーッと波が勢いよく岩にぶつかって、それが跳ね返される音が聞こえる。


瑞月くんはというと、ボーッと夜空を眺めたまま。


かと思えば。



「ひよ、手貸して」

「え?」


「ここ滑りやすいから」


そう言って、優しくそっと手を握ってくれる。

今日の瑞月くんは、暴走したり、黙り込んだり、優しくなったり、いろいろ忙しい。


つかみにくいのはいつものことだけど、今日はより一層つかみにくい。



日が明るいときの海は青くて綺麗だけど、夜の海は真っ黒で、呑み込まれたらって思うとちょっと怖い。


反射的に瑞月くんの手を少し強くギュッと握ったら、同じくらいの力で握り返してくれる。


この動作ですら、心臓がドキッといちいち音を立てるから困るの。


ふと、瑞月くんと同じように夜空を見上げる。


好きな人と夜の海で、綺麗な星空を見てるなんてロマンチックとか思っちゃうわたしの頭の中はどこまでもお花畑状態。