「え……面白いところあった?」


「ないよ。なんか和んだ。やっぱいいなぁ、この子」



サボテンを片手に抱えたまま、反対の手であたしの頭を撫でる理太。


その笑顔と慣れた手つきに、慣れない心臓は、かんたんに脈をあげていく。



「俺のこと考えてくれてありがと。大事にするね」


「……う、うん!」


「じゃあ、愛着がわくように、サボテンに名前つけてよ」


甘えっぽく言われて、素直に応じる。魔法使い理太のしわざだ。


名前……サボテンだから、サボ子?


これだと、サボり癖がありそうかな。



「んー……理太子はどう?」



「センス。俺のこと、自分の名前に似たサボテンを愛でてるヤバい男にしないで」



「それもそっか。じゃあー……」



天井に目を向けながら考えていると、理太が閃いたように言った。




「やっぱ俺が決めた。スナコにする」


「すな……それって、え?」



「一番愛でたくなる名前がいいから。素直からとって……スナコちゃん」



「なっ!」



飄々と言いのけた理太は、持っているサボテンの鉢を、愛しそうに眺めている。


まごまごするあたしなんて、視界にも入っていない。



「愛しすぎて間違って撫でないようにしないとなー……棘って刺さったら抜けにくいしね」



サボテン越しに、目が合う。


じわりと体温があがっていく。



「……、」



「ねー、顔赤いけど、俺なんか言ったっけ?」


「とくに言ってないです」


「サボテンに夢中で何喋ったか覚えてないけど。……そんなに火照らせたのは俺だよね?」



……っ、わざとらしいーっ!


ぜんぶ、わかってるくせに!