そしてリズはそれをずけずけと二人に突きつけた。
王子とその婚約者は顔を真っ赤にして怒り、忌々しいとばかりにリズを睨みつけて入学式に臨んだ。
その後もことあるごとにリズの年齢や態度をバカにして、見下した。
リズの方が精神年齢が年上なので、この性格なりに我慢して、我慢して、我慢して——。
「今度こそ黙らせる。ありとらゆる権力と力と権利を用いて」
あ、これは怒らせちゃいけないのを怒らせたんだろうな、と生徒たちが察したのも無理はない形相とセリフ。
なにはともあれ、エリザベートとヘルベルト、ロベルトも公的なパーティーの場は久しぶりだ。
数ヶ月前に行われたロベルトの母の誕生日パーティーとは違う。
王族や、敵対貴族も多く出席する。
リズから言わせれば「あと五年くらいで魔王が復活するのに、国内で足の引っ張り合いするとかバカじゃないの」と言いたい。
だが、実際しつこく足を引っ張られてきたので第三王子とその婚約者は話が別だ。
潰す。
今度こそ、必ず。
「仕方ありませんわね。とりあえずまずは全員分のドレスとタキシードを拵えませんと」
「あとは小物だな。私たちはもともと持っているものを使えばいいだろうが、モナやフリードリヒは一から仕立てなければならんだろう」
「お金の方はどうします?」
「仕方がありませんから、モナはわたくしが実家に頼んでみますわ」
「じゃあフリードリヒ分は僕が……」
と、お兄さんお姉さんのおかげでモナもフリードリヒもドレスとタキシードの算段がついた。
エリザベートは特に口ではああ言いながら顔はノリノリ。
そんなエリザベートを眺めるロベルトも楽しそうで、フリードリヒのタキシードなど一式は任せろ、とのこと。
頼もしい。
「え、あ、あの、でも……」
「お金のことなら気にしなくてよろしくてよ。それよりもモナ、今度のパーティーは貴族学生ばかり。あなたと歳の近い者が多いわ。平民のあなたとも友達になってくれる人や、あなたを妻にしたいという殿方もいるかもしれない。ビシッと決めて、学園の者たちを見返してやりましょう!」
「え、えー……」
「なんで不服そうなのです!」
「うっ……だ、だって……」
指先をツンツン合わせながら、モナは一瞬チラリととある人物を見た。
それはヘルベルトとロベルトに、パーティーでの作法などを質問しているフリードリヒ。
はーーーーん、と理解したエリザベートとマルレーネとリズ。
確かに冒険者の仕事で、フリードリヒはモナをよく誘う。
平民出身と騎士爵子息。
地位的には近いが、そもそもフリードリヒは身分差などあまり考えてないだろう。
だがあれだけ毎回誘われていれば、意識しないはずもなく……ということなかもしれない。
「や、やっぱりお金のこととか気になるべす」
「いいのよ、本当に気にしなくて。いえ、むしろ今のでますますやる気になりましたわ、わたくし」
「なんでだす!?」
エリザベート姐さんは自分の恋がうまくいっているので、他のことにたいそう余裕が生まれておられるのだ。
それをによによ眺めるリズ。
マルレーネも可愛い妹分がそれではやる気が起きないはずもなく。
「じゃあモナのことはエリザベートさんにお任せしますね。ワタシは管理人さんを仕上げて見せますから!」
「おやーーーー!? ここは三人で結託する感じじゃないのー!?」
「なにを言ってるんですか? 目的はまあ、増えましたけど……元はと言えば管理人さんが売られた喧嘩を買ったからじゃないですか」
「うっ」
ぐうの音も出ない真実。
「というわけで、管理人さんもドレスとか靴とかオーダーで作りましょうね」
「え、待って。ボク実家に仕送りしてるからそんなにお金ないよ」
「えっ! 管理人さん、その歳で実家に仕送りしてるんですか!?」
「うち貧乏なんだよ! 辺境伯が防衛費使っても足りないから、うちからお金借りてくんで……他にも親戚が毎月お金せびりにくるし、賭博しまくってた執事に騙されてお金横領されてたり」
「ッッッ……」
だろう。
言葉を失うだろう。
これら、全部リズが六歳になる前に片づけた案件である。
辺境伯の件は完全なる国費の横領。
この件はすでに国に密告して辺境伯は解任。
元々隣国との関係は良好であったため、現在はリズの実家、エーヴェルヴァイン伯爵家が土地の管理を任されている。
このまま良好な結果であれば、辺境伯に任じられることもあるかもしれない。
次に親戚の件。
リズの母方の実家の息子……つまり母の弟が、浪費癖のある男だった。
両親から働きもせず毎月小遣いばかり強請られて、歳も歳だから、と完全にお金をもらえなくなった母の弟が、あることないことを語ってリズの両親を騙して近くに家を建て住むようになっていたのだ。
五歳になったリズが叔父のあれそれを調べ上げ、証拠を揃えて王都に伝手も作り、追い出した。
そして最後は執事。
家の金を横領し、叔父とともに散財していた。
当然叔父の件の時に解雇である。
しかし、時すでに遅し。
エーヴェルヴァイン家は、王都の金貸しに莫大な借金をしていた。
その上リズの両親は底抜けのお人好し。
領地が飢饉になれば王都の金貸屋からら金を借りてでも領民を助けようとする。
そんな両親を誇らしくも思うが、リズとアリアは物心ついた直後に悟った。



