降り出した小雨が黒い服の袖を濡らす。乾いた土にそっと雨粒が流れて、地面を潤していった。

永遠の愛を誓い合うはずのこの場所で、僕はただ祭壇の前に置かれた小さな箱を見つめていた。装飾が施された綺麗な箱だ。蓋を開ければむせ返るような白百合の匂いがする。箱の中には白百合が一面に敷き詰められているから……。

「ヴァイオレット、どうして眠っているの?」

箱の中で僕の婚約者であるヴァイオレットが眠っている。優しい顔、いつも隣で眠ってくれていた時と同じ顔。でも僕が呼びかけても、さっきからちっとも起きてくれないんだ。

「かわいそうに……」

「一人にしてあげよう……」

ヴァイオレットに声をかけ続ける僕を見て、僕と同じ黒い服を着た人々が哀れげな目を向け、教会のドアを閉める。それをチラリと見た後、僕はまたヴァイオレットに声をかけ始めた。

「ヴァイオレット、早く起きてよ。僕たちの結婚式の準備だってまだ途中だろ?君のドレス姿、とても綺麗なんだろうな」