【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】



まぶしそうに目を眇められて、胸があつくなってしまう。やさしいまなざしで、こころが掴まれる。


「――柚葉」

「う、ん?」

「おいで。怒ってないよ。ただ、抱きしめたいだけです」


ふ、と笑われて、引き寄せられるように身体が動いた。

怒ってないことくらい、目を見てしまえばわかる。

遼雅さんはやさしい。いつもやわらかいところだけを見せてくれる。すてきな人。私の大好きな人だ。


飛び込んで手を伸ばしたら、すこしも揺らがない胸にすっぽりと包まれてしまった。どうしたって、ここが一番安心できる場所になってしまった。

もう、ぜったいに離れたくないと思ってしまうから、こまった。


「柚葉さん」

「は、い」

「はは、ぎゅってしがみついて、かわいい」

「うう、どうせ子どもです」


大人の遼雅さんには、かなわない。

悔しくなってますます抱き着いたら、やさしい笑い声が頭の上ではじけた気がした。


「俺には子どもになんて見えないけどなあ」

「ほんとう、ですか」

「もちろん。自慢のつまです」

「……ああ、もう、もう!」

「お顔見せてください」

「やです」

「ええ、おどろいた。まさか柚葉さんに振られるとは。さみしいな」


すこしも思っていなさそうな人が、くすくす笑いながら耳に囁いてくれる。