スタッフの言葉に、私達はぱっちりと目を開けた。
 ネイト。
 ち、とか舌打ちしなかった?
 スタッフが面白そうに私達を眺めている。

「More difficult than acquisition
(買収より難しい)」

 ネイトがエスタークホテルに求めているものは、フランチャイザーだ。
 エスタークのブランド力やノウハウが欲しい。
 そのため、買収後にエスタークへのフランチャイジーになる旨を提示するのだという。

 多賀見ほどではないけれど、エスタークも創業者一族が筆頭株主であるらしい。
 ネイトが持ち株を一〇〇%保持できるか微妙だそう。

「株の譲渡を要求される可能性もある。割合も交渉だな」

 また。
 所要時間50分圏内にある、創業者一族の縁戚で旧財閥が持つホテルへの慮りもある。

 む、難しそう……!

「It's a top secret matter(極秘事項だ)

Miss. Don't tell your family
(ミスは家族にも言わないで欲しい)」 

 お、おおごとだっ。

「Of course, don't leak it to Estark officials
(勿論、エスターク関係者にも漏らさないよう頼む)

 
 エスタークホテルの関係者は知り合いはいないから、大丈夫でしょ。
 財閥が持ってるほうの複合施設。
 確か、病院が併設されててウチの薬を卸してたけど、薬剤師さんともお医者様とも深い付き合いはないから大丈夫。

 私は片手を挙げた。
 
「I swear to my most important Nate and won't leak
(私は、私の一番大事なネイトに誓って漏らしません)」

 私の誓いにネイトは破顔したのだった。