それからは忙しいけれど、充実していた。
 あらためて雇いいれられた、治験スタッフとネイトとの懇親会を企画したり。
 すっかり定着してしまった「クロスブレイドは悪い薬」との噂を払拭するためのキャンペーン戦略会議に、陰ながらオブザーバーとして参加させてもらったり。

 私は彼のスウィートにずっと泊まりこんでいた。
 朝はネイト御用達のドイツパンを食べる。
「市場調査」と称しては、二人で街角のドラッグストアに立ち寄って売られている薬を調べた。
 疲れるとスウィーツショップで休憩をとる。
 勿論、ストリートピアノもコースに入っている。
 私の部屋から楽器を持ってきてもらった。
 夜は気に入った店でディナー。

「玲奈を痩せさせなければ」

 ネイトはそんなことを言いながらウインクしては、様々なアクティビティに私を連れていく。
 
 屋上に設られたプールを貸し切って裸で泳いだり。
 ホテルに入っている有名ブランドに連れていかれ、気づいたらクローゼットの中身が増えていた。

「贅沢はダメ!」

 めっ、と怒ればむう、とふくれる。
 か、可愛いなんて思ったら負けなんだから!

「大好きな玲奈に、恋人である僕がプレゼントしてなにが悪い」

 開き直ったー!
 私があうあうと口をきけないでいると、魅惑的な笑みとキスが降ってくる。