起きたら、朝食もそこそこ。
 ヘルガさんのコンサートに連れていくからと、再びハイブランドばかりを集めたセレクトショップがネイトの部屋に出現した。
 ……のは、予告されていたから、いいんだけど。
 いや、よくない。

「あ、の。ミスター?」
「なんだ?」

 ネイトはゆったりとソファに座って足を組んでいる。スタイリストさんもお針子さんも、彼をちらちら見ている。
 豪華な室内。
 洗練された仕草の彼は、誰が見ても貴公子にしか見えない。彼からしたら、私なんてまるっきりの庶民よ。

「玲奈?」

 いかん、見惚れてた。

「あ、の。多すぎませんか?」

 ハンガーに吊るされ、覆いをかけられた状態で運ばれたドレスは十着じゃきかないんだけど。
 おそらくは靴やバッグと思われる箱の数も多い。
 手錠付きのケースで運ばれてきたのは……宝石?

「この前スーツを選んだら、イメージがふくらんでね。急いで取り寄せたので、プレタポルテなんだ。どこもパリコレクションで発表しているメゾンではあるのだが、すまない」

「……それのどこが謝罪される理由なのでしょうか」

「ん? オートクチュールじゃなくて悪かったなと」

 この、生まれながらに上流階級め。