一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】

「上昇志向はね……、学生の頃は『コンマスになれないんなら人類じゃない』くらいに思ってたの」

 黒歴史って、ほんと穴を掘って埋めちゃいたい。

「わかる」
 
 言ってもらってほっとした。

「仕事もそうか?」
「どちらかと言えば、そう」

 ただ、どのことを言ってるのかしら。

「勉強出来る機会は逃したくないわ。上を目指したいのよ」
「会社役員ということか?」

 私は首をかしげた。
 少し違う。

「結果的にそうなるなら、受け入れるけど……。薬の知識だってまだまだだし、もっと患者様の役に立てるんじゃないかと思うの」

 私の言葉に、なぜかネイトが息を呑んだ気配。
 彼の顔を見れば「続けて」と促された。

「我が社は『部下に権限を、高給取りほど責任を負う』の」

 おかげで『居心地のいい現場から離れてくれず、管理職になりたがる人間が少ない』って、お父様は笑ってる。
 おかげで好きに暴れ……、動き回らせてもらってる。
 そのことかな。

「ドラッグストアオープン前日なのに、台風の影響により搬入率が五〇%以下で、徹夜で物流センターに引き取りに行ったとか」

 指を折りつつ考える。

「高額薬を使えば助かるのに、患者さんの家が夜逃げ寸前で。業を煮やして社内募金して回ったことかな」

 んー。

「それとも、地方の患者さんが欲しい薬を、大した症状じゃない人にコネで回した営業を叱り飛ばしたことかな? ……あり過ぎてわからないわ」 

 あは、と笑ってみた。