異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます

 ちょっとこちらを覗き込むように、はかるような眼をして見つめるアーサー。

 そっか。あたしはずっと茉莉花だと思われてたのか。そう思う。

 まあマリカの姿だし茉莉花が表に出てきてるって思われるのが普通だよね。それに。

 あたしの今の言動なんかには確かにマリアンヌらしさはカケラもない。あたし自身だってそう思うもの。いつからかな、もう随分とあたしと茉莉花には差が無くなってきている。思考も記憶も感情も、全て同期してるのだ。もうしょうがないよね?

 あたしはマリアンヌらしく、茉莉花はマリカらしく振る舞おうと意識しないとなかなか個を保つのも難しい。

 唯一の違いって言えばアーサーへの恋心かな。

 彼女はまだ吹っ切れてない。こうしてアーサーの近くにいる時は奥に篭ってなかなか出てきてもくれないし。

「マリカはアーサーさまの事が本当に大好きだったから。だからあなたのそばにいるのが今は辛いって奥に引っ込んでしまってるから……」

 あたしは正直にそう答えた。ごめん茉莉花。でも、一度ちゃんと話しておきたかったの。

「え? それって……」

「マリカは、ううん、あたしたちはあなたに恋をしていました。今更こんな告白しても迷惑かもだけど、ごめんなさい」

 お湯に肩まで浸かったアーサーがこちらに向き直った。ちょっと真剣な顔。

 彼女は手を伸ばしてお湯の中であたしの手を取ると、ギュッと握って。

「ありがとうマリアンヌ、マリカ。僕も君のこと、ううん、君たちの事、好きだよ」

 はう。

 ちょっとその目力が強烈すぎる。

 あたしの顔がのぼせたように真っ赤に上気するのがわかる。

 心臓がドキドキして、もうダメ……。

「でも、だって、あたしたち女同士だったし……。だから諦めて……。マリカは諦めきれなくて辛くって……」

 しどろもどろにそう答えるあたしをアーサーは引き寄せて、そして抱きしめた。

「いつかきっとこの呪いを解いて、そして僕は僕に戻るから……。だから、それまで少しだけまってて……」

 え? どういう事? 呪いって比喩じゃなかったの?

 あたしの胸に当たっている彼女の胸は、やっぱり柔らかくて。男の人の胸とは違うってそんな感じだったのだけど。

 それでも。

 あたしはアーサーの言葉に同意するように、手を彼女の背中にまわした。







 時間にしたらほんの数分だろうか。

 そうしてあたしたちはしばらく抱き合って。あたしの目にはうっすら涙が浮かんでた。なんだか、嬉しくて。

「マリアンヌ、そのまま聞いて。どうやらあんまり嬉しくない輩に囲まれた気配がする。合図をしたら一気に脱衣所まで走るよ。できればシールドを貼ってくれると嬉しい」

 そう耳元でアーサーが呟いた。