異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます

 翌朝あたしたちは街の中央にある図書館に向かった。

 図書館に行くのにも護衛って必要かなってちょっと仰々しいなぁとか思っては見たものの、彼女らには彼女らの矜持があるのだろう、護衛任務を解く様子はなかった。

 昨夜は結局お風呂上がってご飯を食べたらそのままベッドにバタンきゅうだった。

 身体が火照ってたのもあるのかお腹が膨れたら急激に眠気が襲ってきて。

 いろいろアリアと話したいこともあったんだけどそんな気力がなかったよごめんね。



 それにしても。

 今も隣を歩いているアーサー。

 彼女の事を考えると胸が痛い。



 茉莉花の記憶、経験の中にある身体は男性だけど心は女性だとか、身体は女性だけど心は男性だとか、そういう人達の話。

 あまり詳しくはわからないけどそういう人もいるんだなって、そんなふうに感じてた。

 テレビに出ているタレントさんでもそういう人がいたしね。そんな事もあるのかなって、ほんとそれくらいの浅い知識だけど。


 彼女はアーサーで居ることがあまりにも自然だ。

 恋愛対象がどうかまでは聞かなかったけど、それでも。


 だから。


 せめてあたしは彼女、ううん、彼のことをアンジェリカじゃなくてアーサーとして扱ってあげよう。

 同情? じゃ、ないよ?

 共感? そこまではわからないけど。

 きっと、あたしがそうしたいから。

 あたしがアーサーを好きだから。

 恋愛対象になれなくてもならなくても構わない。

 あたしが彼の事を好きだって事実は歪めようがないもの。

 いいよね? 茉莉花。

(うん。マリアンヌ。あたしも同じ気持ちだよ)


 最近は茉莉花の気持ちとあたしマリアンヌの気持ちがほぼ同調している。

 これも。

 ちょっと寂しい気もするけど、必然、なのかもしれないな。




 下町中町と抜け貴族街の建物を通り抜けるとそこには森があった。

 公園? そんな感じの緑。

 青い屋根の中央官庁の建物が奥に見える、かな。


 案内板を見ながら図書館に向かうとポッカリと木々が開けた隙間に赤茶色の建物があった。

 ここだけ赤煉瓦っていうのもなんだか不思議。

(ああでも図書館っていったらこうじゃなくっちゃ、みたいな?)

 あは。

 茉莉花の記憶にある街の小さな図書館。

 古い大正時代の建物がそのまま残って図書館として使われて……。

 そんなノスタルジックな郷愁の念。

 そんな感情があたしの中に溢れてきた。

 そのまま入り口から入って……。

 え? アリアとクラウディア、コルネリアが何か見えない壁のようなものに阻まれている?

「うーん。魔力紋ゲートだねこれ」

 ああ、そっか。こういうところにもそういう仕掛けがちゃんとあるのか。

 でもなんで? あたしとアーサーは大丈夫なのに。

 入り口の見えない壁は声も遮断するのかな。何か喋ってるのに聞こえない。

 あたしは一旦外に出てアリアに話しかけた。

「なんだかここ、魔力紋ゲートがあるみたい」

「ですよね。あたし最初魔道士の塔に入る時、レティーナ様に入り口で登録して頂いたんです。そうしないと入れなくて。こんな壁状態でした」

「うーん、どうしよっかな」

「しょうがないですよね。あたしここで待ってます」

「うん、ごめんね。中に入って責任者の人見つけたらなんとか入れるよう頼んでみるから」

「はい。もし入れなかったらそれはそれでいいですからね。その分マリカさん頑張って資料探してくださいね」

「うん。任せて」



 図書館の目の前の庭園にはベンチもある。木陰になってて涼しそうだし、そこで三人には待っててもらうことにした。

 もちろん中で責任者のみたいな人見つけたら登録頼んでみるつもりだけどね。

 あたしとアーサーがここに入れたのは……、やっぱり王室の血、かな。

 たいていの魔力紋ゲートをフリーパスできるよう子供のうちに登録されていたのかもしれない。



 アーサーと共に図書館のロビーを進むと、目の前に、大きな猫のぬいぐるみが二体現れた。