午後からはまったりとお母様に甘えるあたし。

 猫の姿になってお母様のお膝でブラシをあててもらうのだ。

 にゃぁとゴロゴロ転がってるあたしにお母様、背中や耳の脇を丁寧にブラッシングしてくれた。


 ごろごろ。ごろごろ。自然に喉がなっちゃうけどご愛敬。なんだかほんと幸せなの。


 たまには猫の姿になって見せてってお母様にお願いされたあたし、こうしてお膝の上でされるがままにしているのもけっこういいもの、なのです。


 お庭の白いローチェアに腰掛けあたしをもふもふモフルお母様。

 はふー。

 思わず心の中で声が出ちゃう。

 実際には

「にゃぁぁぁ。。。」

 って後半は声になって無い感じで鳴き声を洩らしてるそんな感じになっちゃうんだけどね。

 気持ちがいいとついついにくきゅうを思いっきり開いて爪が出ちゃう。

 本能なのかなお母様のドレスの上からモミモミ始めちゃってたら、

「まあまあマリアンヌ。我慢できないのはわかりますけどあんまり爪は立てないでね」

 そう優しく言われて我に帰る。

「ごめんなさいお母様……」

 そうそう、ねこのままでもヒト語が話せるようになってたんだっけ。忘れてたよ。

「あらあら。猫の時のマリアンヌは子供の頃みたいなお声で話すのね。かわいいわ」

 あう、そうなんだ。

 自分の声ってよくわかんないけどこの猫の時の声って子供の声みたいなんだね?

 あ、子供の時といえばそういえば……。

「そういえば、お母様、わたくし子供の頃王宮の薔薇園で迷子になった事がありましたわ。お母様は覚えていらっしゃる?」

 確かお母様に連れられて王宮に行った時だったから、覚えてないかなぁお母様。

「あら、迷子になってたの? マリアンヌ」

 え?

「わたくしが王宮にエリーを訪ねて行った時の事ですよねきっと」

 エリー、って、エリザベス前王妃の事だよね。

「あの時は確かジュディの娘のアンジェリカにあなたの事託してわたくしエリーの寝室にお見舞いに行ったのですけど、おかしいわね? どうして迷子になったなんて思ったのかしら?」

 はう?

 アンジェリカ王女?

 そういえばアンジェリカ様とはあんまりお会いした記憶、ないのに。どうして?

「わたくし、あの時アンジェリカ王女とお会いしたって記憶、ないですけど……?」

「んー。だってマリアンヌあなた、アンジェリカと薔薇園で遊んでたって。楽しかったっておっしゃってたでしょう?」

 あうあう?

 だって遊んでたのは薔薇園の王子様だし。

「わたくしが薔薇園に迎えに行った時も、アンジェリカと仲良く手を繋いでたじゃないですか」

 うそ!

 あたしが手を繋いでたのは薔薇園の王子様、マクシミリアンによく似た……。

「ああ。そういえばあの時アンジェリカ、男の子みたいな格好していましたからね。それでもしかしてマリアンヌ、彼女の事アンジェリカだって気がつかなかったのかもしれないわ」

 え?

 じゃぁあの時の薔薇園の王子様、アンジェリカ王女様だったって事なの!?