「避けていると言われましても……」

「あちらから婚約を解消してこられたのですからね。もうお会いする必要もございませんでしょう?」

 そうお母様が助け舟を出してくれた。

 クローディアはキッとお母様を一瞬睨み、そしてあたしの方を一瞥して。

「もう例の奇病は治ったのでしょう? でしたら避ける意味もないじゃないですか。それに、別にわたくしはマクシミリアン様との婚約をもう一度結ぶべきなんて思ってもいませんわ。ただ、今のままではマクシミリアン様の未練が酷くて見てられないのです」

 あう。

 あたしの病気のことって周知の事実だったのかしら……。みんな知ってたの?

「では。お会いしてきっぱりとお断りすればいいってことです? マクシミリアン様のお手紙は会いたい会って話がしたいとそれだけで。わたくしにはもうあの方とお話しすることはありませんとお伝えしてる状態なのですけど」

「そういうことです。お会いしてきっぱりと未練を断ち切ってくださればよろしいのですわ」

(んー? ねえマリアンヌ、これ、どう思う?)

(もしかして……。クローディア様、マクシミリアン様のことお好きなのかしら?)

(そうだよねー。そんな気があたしもするんだけど)

「お会いしてもマクシミリアン様が諦めなかったら? わたくし折れてお付き合いする事になってもお姉様はそれでよろしくて?」

 いきなりカーッと顔が赤くなるクローディア。

 あ、図星だったのかな?

「それならそれで、まあ、しょうがないわね……。わたくしは今のマクシミリアン様を見ているのが辛いのです」

 そう言いながら、お顔の色が悪くなっていくクローディア。

 あうあうあう。これは……。

「わたくし、今、別に好きな方が居るのです……。ですからマクシミリアン様と会うのが怖いのです。無理やりに何かされたらと……」

 あたし、というか、マリアンヌは少し上目遣いでそうクローディア様の顔色を覗く。

 あたしのセリフを聞きちょっとお顔を綻ばせた彼女、

「ああ、ああ、マリアンヌ、あなたは今恋をしていらっしゃるのね。それならばわたくしは全力で応援いたしますわ。ええ。かわいい妹なのですもの。協力は惜しみません」

 と、早口でそういう。

「でも、そうしたらマクシミリアン様は……」

「それならば、貴女が他の方と婚約でもすれば諦めもつくでしょう。わたくし、本当に協力しますからね!」

 と、彼女はマリアンヌの両手を握り、ブンブン上下する。

 あは。なんだかかわいい? ちょっとクローディア様のこと好きになれそう、かも。