「では私はこれで」

 ケイン・フェリス白騎士団長様がすくっと立ち上がり、ドアまで歩く。

 あたしはちょっとぼーっと彼の後ろ姿を見てて。

 あうあう。後ろ姿までかっこいいかも。そんな風に見惚れてたらレティーナ様、

「フェリス様はあの年で独身なんですよねー。わたくしの趣味じゃないですけどけっこうオモテになるでしょうに」

 と、そんなことを言った。

 うきゅ? もしかしてあたしが見惚れてたのがバレた?

 ちょっと恥ずいよ。

(まあねー。茉莉花ちゃん露骨に好き好きオーラ出てるかも?)

 えー。マリアンヌまでー。

 でもねー。なんとなくねー。安心できる感じっていうかー。

 そういう雰囲気がいいじゃない?

(あは。やっぱりおじさん趣味だ)

 もう! っていうかフェリス様はおじさんっていうのかわいそうだよ? あんなに素敵なんだもん。

(そっかー。ステキ、なのね)

 もう。マリアンヌったらひどい。

(あは。ごめんごめん。茉莉花ちゃんってもとの世界だとわたくしより少し年上だったんですものね?)

 まあ、少しって言っても3つくらい?

(そっかー。もう結婚して子供生まれててもおかしくない年齢だったんですものね。だったらわからないでもないですよね)

 あうあう。そっか。この世界じゃ十七歳って言ったら母親になっててもおかしくない年齢なんだっけ?

(そうですよねー。うちの親戚筋の子たちもみんなだいたい十五歳前後で嫁いでますしー。わたくしはもう少し自由でいたいですけどね)

 うん。流石に早いよね。もうちょっと人生楽しんでもいいかも?

(わたくしもちゃんとした恋愛がしたいです……)

 そうだ、ね。

 ごめんマリアンヌ。

 頑張って聖女の修行をして、そんでもってあたしたち、ちゃんと身体を本当の意味で共有できるようになりたいね。

(ええ。わたくしも表に出られるよう、頑張りますわ!)

 うんうん。頑張ろう。



「さて。マリアンヌ様? そろそろ講義を始めてもよろしいかしら?」

「あ、ごめんなさいレティーナさま。ぼーっとしてました」

「では。まずは魔力(マギア)真那(マナ)、そしてこの世界の成り立ちから、おはなししますわね」

 そう言うとレティーナ様は立ち上がり、両手を広げて詠唱を始めた。

「イア! イア! デウス・エクス・マキナ! マギレイス!」


 天井いっぱいに魔法陣が浮かび、そしてそこに薄く平べったいレンズのような物が現れ。

 天井全体を覆った。