「...ねぇ、こっち見て、由奈」


「ん...?」


「――――好きだよ、由奈」



手を頬にやって、彼はうっとりとした顔で笑う。


好き、か。


...もう私も、いい加減諦めるべきではないだろうか。


軟禁状態、しかも相手の頭はネジが数十本外れている。


到底、逃げ切れるわけが無いのだ。


何か一つに熱中したとき、人間の能は100パーセントになる。


もし彼が私に熱中していたとして、能を最大に引き出せる彼に、勝てっこないのだ。


諦めて、彼のものになるべきだ。


私が一人なのも事実。


また、他の人にこだわる必要が無いというのも事実。



「ずっと隣にいてよ、由奈」


「......」



うん、か、はい、と言えばいいだけ。


でも私は、何故かその二文字を言う決心がつかなかった。


二文字。たったそれだけ。


でもその二文字で、今後の生活が大きく変わることを考えると、言えなかった。


重みが違う。


今日遊びに行こー?などの軽い言葉に応答するうん、ではない。


心の中の覚悟はきまっている。


だが、体の覚悟はどうも、つかなかった。