─昔から、どうしても人と話すのが苦手だった。
人の視線が、笑い声が、どうしても怖かった。
自分に向けられている視線が良いものではないのは分かっていたし、
自分自身、人と違うのは分かっていたからだ。
こんな思いをするなら、もう誰とも関わりたくない。
そう思ってとった行動が、今後の自身の生活を狂わせるなんて
この時は本当に、思っていなかった。



11月下旬、とある公園にて。
時刻は夜22時を回り、人の気配は少なくなっていた。
130円のコーヒーと共に過ごす静かな一時にそっと瞼を閉じてみれば、
耳を撫でる木々の囁きと冷たい風の感覚に
心なしか落ち着くのが感じられる。
軋むブランコの音は夜の静寂に溶け込むように消えていき
元より人通りの少ない道路に面したこの公園は
一時的にと言えども自身だけのものだった。
人との関わりが苦手な自身にとって
一人きりの空間というものは凄く貴重で、
自宅の自室ですら一人きりになれることは少ないが故に
夜な夜な家を抜け出しては、この公園に入り浸っているのである。
この街に秋の終わりが近付いていることを知らせるような冷たい風は、
中学生である自身がこの時間に公園に訪れることを
何処か拒んでいるようだ。