もうっ、可愛いって言えば何でも許されると思ってない?千景くんたら。


「花の気持ちはよくわかったよ」


「千景くんっ……もう言わないでったら」


恥ずかしくって彼の胸をパンパン叩いた。


「どうして?俺も同じ気持ちだよ」


だけど、彼のその声は真剣だったからドキドキした。


「へっ?」


同じ気持ちってつまり、それってつまり、千景くんも私とまたキスしたいと思ってるってこと?


「あ、10分すぎてた。じゃあこれで。また明日な」


うう、そこのところをもっと詳しく突っ込んで聞いてみたかったけど、残念、時間切れ。


千景くんは私の背中から腕を離すと、もう一度私を覗き込んで照れくさそうに笑う。


「う、うん。また明日」


今日もいつも通り、彼との短い逢瀬はあっというまに終わる。


短くても私達にとっては濃密な時間。


駅の中に消えていく彼をいつまでも目で追ってほわっと胸が熱くなる。


千景くんさえいれば、私はただそれだけで満たされる。