オレンジ色に透ける光が眩しくて、より深く先輩の胸に顔を埋めた。


グラウンドから、運動部の掛け声が聞こえる。
帰路に着く女の子たちの声が聞こえる。

こんなにも周りは日常なのに、今耳の一番近くで聞こえるこの鼓動は、日常にはなってくれなくて。


深く息を吸って、もう一度呟いた。


「…大好きです、先輩」


ぎゅう、と腕に力を込めると、先輩が息を呑む音がした。


「乃々──」




コンコン。

突然、すぐ隣の壁を叩く音。

私は大袈裟なまでに肩を震わせて、先輩と顔を見合わせた。
もしかして、保健室の先生が帰ってきちゃったんだろうか。

水曜日は職員会議で、この時間はいつもはいないのに。

こんなことなら、鍵を閉めておけば良かった、なんて。


これからされるであろう注意と、今日はもうこのまま帰ることになるんだろうなぁ、という予感に落胆しながらカーテンを開ける。


───そんな、生ぬるいものならよかったのに。




「ッこの、泥棒猫!!!!」


鋭い叫び声と、パンッという乾いた音。
しばらくしてから、左頬にジンジンと熱い感覚。


叩かれた箇所とは裏腹にすうっと冷えていく頭で見上げると、そこには『彼女』が立っていた。