まるで操られるみたいに、1歩2歩と近づいて、私は先輩の胸に飛び込んだ。
はずみで、ギシリとベッドが軋む。
…わかってる、これはいけないこと。
「わ、どうしたの?今日はいつもより積極的だね」
そんなところも可愛いけど。と付け加えて先輩は微笑む。
──嘘。
「今日はいつもより勉強頑張ったから…。癒してください、先輩」
ぎゅう、と抱きついて2人ベッドに沈む。
シーツの感触と、先輩の匂いにドキドキと心臓が高鳴る。
先輩はふふ、と微笑んで、私の髪に指を通した。
「お疲れ様、乃々花。じゃあご褒美に日曜日にデートしよっか」
──嘘。
気付かないふりをして、私は無邪気に笑った。
「ほんと?嬉しい!それなら映画とか、行きたいです。この間から先輩が気になってたやつ、やってるから」
「乃々花が見たい映画でいいのに」
「先輩が好きなもの、もっと知りたいですから」
睫毛が触れそうな距離。
にこりと微笑めば、先輩は一瞬目を見開いた後、…おでこを、コツンと合わせた。
「もー!ほんとかわいいな、乃々花は!」
至近距離で微笑まれて、きゅう、と心臓が鳴く。
好きで、好きだから…胸が苦しい。
今までも、これからも、交わることのないだろう唇を吊り上げて、私は笑った。
「大好きです、先輩」
この時間が永遠に続けば良いのに。
そう思う私の気持ちだけが、きっとこの場では真実だ。



