会長は私と向き合って私を見つめたまま、静かに口を開く。 「…なに言われた?」 「なにも」 私が首を横に振ると。 「じゃあなんで泣く?」 困ったような顔で、私の顔を覗きこんで言った。 声も、ひどく優しくて。 怒ってる? そんなわけない。 会長が、怒るわけない。 会長はすぐ怒るけど、こういう時、くだらないことで怒ったりしない。 会長のこと、全然知らないけど、知ってる。 少しはちゃんと、知ってるつもり。 それなのに、なにも言えなかった。 なにも、言い返せなかった。