――――失敗した。




「どうして呼び止められたか。わかる?」


低いトーンの声を背後からかけられ

背筋が、凍り付く。


「わかるよね」


繰り返し確認されているのは

紛れもなく


わたしが【万引きをした】という事実。


このあと家や学校に連絡されて

ひょっとしたら警察にも通報されて


「……っ」


それで

それで――……


「おいで」


連れて行かれたのは

【関係者以外立入禁止】と書かれた扉の奥。


たぶん、事務所。


「出して」


自分より明らかに年上の男と

部屋に、二人きり。


……逃げ場なんてない。


言われるがままに

テーブルの上に盗んだコスメを並べる。


男は、すらりと背が高く

カジュアルな格好をしていて

店員なのか、
それとも私服警官なのか

いまいち判断がつかない。