――――なにも、できなかった。
駅から飛び出すつぐみちゃんを引き止めることも、つぐみちゃんの気持ちを汲み取ることも。
ヘンな男に絡まれていたつぐみちゃんを助けることも。
警察を呼んだり、周りに救いを求めることさえも。
あの場に土屋さんがいてくれなきゃ
今頃どうなっていたか。
「……え?」
突然、上着の袖を引っ張られ
顔をあげると
つぐみちゃんが、わたしになにか見せてきた。
スマホの画面だ。
【おいしいって伝えて下さい】
……つぐみ、ちゃん?
「美味しいそうです」
なんで本人に言わないんだろう。
わたしでなく、土屋さんに見せればいいんじゃ……?
わたしから伝言を聞いた土屋さんが、
「っしゃ!」
ガッツポーズをとったあと、ハッと我にかえる。
「そうかよ。……やっと口に合……いや。俺の料理の魅力に気づきやがったな。鈍い舌してんぜ」
めっちゃ嬉しそう!
ニヤニヤおさえきれてない!


