それが本当なら
わたしがあのとき感じた
タクミくんの絶望は
「僕が少年を大きく評価したいと思う点は。ただ、頭がいいだけじゃなく。狡猾なところ。彼のウソは秀逸だ。使う相手もタイミングもよくわかってる」
「……っ」
「キミの同情を誘い僕の協力を得るのが彼の真意。わざとかわいそうな子を演じ、キミに自分を放っておけなくさせた。まさか生まれ変われたり、憎き母親に死ぬより辛い思いさせるまでのプランが用意してもらえるとは、彼も考えていないみたいだったけど」
「なに、言ってるんですか」
「本当に死ぬ気なんてあったのかな」
「え……」
「あの年まで損得勘定のみで暮らしてきた少年が。犯罪を繰り返し、他人を利用し続けたショウが、自分を“価値がない”と考えるだろうか」
彼の絶望は誰に向けられていた?
「僕の提案を呑むの、すごくはやかったでしょ」
……はやかった。
「決断がはやいんじゃなくて。答えは既に決まっていたのさ」


