わからない。
カイくんは、わたしをからかって
なにが楽しいんだろう……。
「そうそう。“タクミくん”の話だけど」
「え?」
「児童相談所に一度世話になったっていう」
「ああ……あれ、聞いてたんですか」
「調べてみたよ」
「……? 当時のことをですか?」
「うん」
どんな様子でタクミくんが保護されたとか
そのときのお母さんのこととか、
そういった事情についてだろうか。
どうして彼を生まれ変わらせたカイくんが
今さらそんなこと……
「そんな記録なかった」
――――?
「なかった?……え?」
「タクミくんは。児相の世話になっていない。一度たりとも」
「そんなはず、ないです」
「いいや。間違いない」
「だって。たしかに……本人の口から、聞きましたよね?」
「僕の情報網の正確さ。キミもなんとなく気づいてるでしょ」
それじゃあ
「もっと言うと。あの子のランドセルは母親がもらってきてくれたものではない」
「どういうこと、ですか」
「自分で手に入れたものだ」
「……え?」
「あの子は。見計らっていたのさ」
ショウくんは……
あの子は、わたしにウソをついたの?
「親を棄てるタイミングを」


