コンコン。
「星河君ちょっといい?」
部屋の扉の向こうから女の声と共にノックされる。
「未茉、ちょっとこっちに隠れーー」
視界に入らない机の裏側へと腕を引っ張ろうとすると、

ぽたぽた…と頬には無数の涙が溢れ怒りで震える未茉を見て、
「分かった。とにかくここにいろ。いいな?」


「どうしたの?なんかあった?」
出るのが遅かったからか、その女は不思議そうに尋ねた。
「音楽聞いてた。何どうした?」
「月末の文化祭なんだけど、実行委員の星河に聞いこいって先生が。」
「俺、停学中なんだけど。」

「それだけ頼りにされてる男が警官殴るなんて。よっぽどの女の子なんだね。」

「まぁーな。」
「こんないい男独り占めする白石未茉ちゃんに会いたいな。」
「ま、会おうと思えばすぐ会えるけどな。」
「え?」
「いや、今から生徒会室行ける?データ入ってると思う。あ、USBロッカーだから」
「一緒に来てよ。」
「面倒くせぇな。」
「もーこっちのセリフだからね!」

くすくすと笑い声と共に扉が閉まり、二人の足音が遠くなってく。


「なんであたしの名前知ってんだ??」

女バスかなぁ?と首をかしげた。

「帰ろっかな…」
珍しくしゅんっと気持ちが下がってくのは、健のさっきの言葉のせいだった。

カーテンを開けて窓辺に手をかけるが、
「なんか好奇心。」
ニヤリと未茉は微笑む。