凛々しくて彫の深い整った顔立ちに、長く黒い睫毛にくっきりとした切れ長二重に、黒くて吸い込まれそうな綺麗な瞳に自分が映る程、その距離は近かった。

「にげぇ…」と涙ぐむと、
「ガキか。早く水飲め。」
ごくんっと飲み込むと、ぷはっと息を吹き返した。


「よし、じゃお前はそのまま寝てろ。」

「寝る…?」
ぽかんっとする健は、二段ベッドのはしごへと誘導する。

「俺は停学中の課題やるし、お前は病人だからゆっくり寝ること。オッケー?」
「えぇ~~~眠くないしぃ!!つまんない!!つまんない!!!」
足をバタバタさせてだだをこねるが、 
「つまんないじゃねーだろ!」
問答無用と力づくではしごに登らされると、

「お。」
目の前にはすらりと伸びた細長い足から透けたティシャツの奥が見えそうになり、
「あ?」
後ろからの声に振り返ると、健はぴらっはとティシャツを廻りあげた。

「なんだ。見せパンはいてんのかよ。」

「あたりめぇだろ!!おまっ!!なんっつー…」
見られることよりも健が自分のお尻の近くに顔があることに未茉は驚き、思わずはしごを掴む手を緩めてしまい、

「っと。」
がっしりと今度は腰を掴まれて、支えられる。
「わりぃ」と未茉が健の方を見ると、すぐ側になんてことない顔して真っ直ぐにこっちを見つめる顔がある。

健の右腕はベッドを柱を掴んで左腕で未茉を支えるようにして、二人の体は密着したままだった。

「健兄。」
両肩に手を回して両足でしがみつくようにぎゅっと抱きつき、
「抱っこして連れてって♪」
「・・言うと思った。」
と言いつつ、健はしっかりと抱き上げてあげる。
「へへっ♪」
嬉しそうにまたしっかり抱きつく未茉は小さな頃から甘やかしてくれるこの逞しい温もりが大好きだった。