「未茉ちゃんのフォロー大変でしたね。匠さんも…健さんも。」
だからあんなに兄貴代わりをしているのかと、腑に落ちた。

「いや、俺より健だよ。」
「…」
「健が未茉の傷ついた心埋めてる。今でも。俺なんかは全然。」



“俺がお前の兄貴になってやる”


「未茉が颯希さんにいじめられて大泣きした日、そうやって慰めてた。」

“だから泣くな。な?”
“うん…!!”
嬉しそうにめいっぱいの力でしがみつくように抱きつく幼い未茉の表情を思い出していては、健には太刀打ちできないな。と今でも匠は思い更ける。

本物の兄貴以上に兄貴をしていたのは、健だったのだから。


「アイツが王子学院に入ったのも、颯希さんを越える為だ。」

「え…」
「颯希が作った記録全部俺が塗り替えてやる。って未茉を悲しませたアイツを絶対に許さねーって。」

「…」

「敵わないだろ?健の愛には。」
隣で言葉を詰まらす翔真に思い知ったかと匠は揺さぶりをかけたのだった。

「…はい。脱帽です。」

(誰にも健の未茉への思いには敵わない…。お前もだ湊。)
匠は翔真を横目で見ながら切り札を出した。

「だからアイツの今のケガは誰よりも何よりも悔しいはずなんだ。」
「…」
「お前も早いとこ諦めた方がいい。健の未茉への思いは誰にも敵わない。未茉はきっと最後は、健を選ぶ。」

分かったな?と匠は席を移動した。