“何度言われたらできるんだ!?そんな基礎もできないのか!?”
「清二さん設立のクラブリーグの監督でもあった清二さんに毎日怒鳴られていたよ。やっぱり颯希さん長男だし、清二さんもバスケという夢を颯希さんに託していたから特に厳しかったんだと思う。」
「未茉ちゃんにも厳しかったんですか?」
「全然・・むしろ清二さんと雅代さんは未茉には女の子らしく可愛らしくおしとやかに育ってたかったんだよ。ほら雅代さん見てれば分かるだろ?」
「はい・・・。」
「だから余計に、未茉がバスケを始めたことが颯希さんのプレッシャーになった。」
“かわいそうだな。いいとこ全部妹に持ってかれたんじゃないの?”
“サラブレッドのくせに下手じゃん。”
“また親父に怒られてるぜ。あの出来損ないの息子”
「子供ながらに大人や子供から酷い言葉を浴びせられて育ってたと思う。颯希さんは。
あの誰もが知る日本代表のエースでNBAプレイヤー白石清二の息子というのと、妹の驚異のサラブレッドに挟まれて。」
「…」
あの歪みはそこから来たのかと翔真も納得した。
「小学校一年から参加したミニバスの全国大会では6年間ずっと未茉は清二さんのクラブを優勝に導いて、アンダー12の日本代表の常連という物凄くとんでもない偉業を達成してしまったんだ。
それを誰よりも長男の颯希さんに望んでいた清二さんの夢は、いとも簡単に娘の未茉がやってのけた。」
「……」
「そんなプレッシャーに耐えても、どんなに頑張っても、中学の時もひとつも颯希さんはタイトルは取れなかった。
誰よりも、血の吐くような練習を重ねながらも…ね。」
“お前が男と遊んでる間、血を吐くような思いでみんな練習してるぜ。”
昨日コンビニで放たれた言葉の本当の意味を納得した。