ベストを尽くしたものの、愛知には及ばなかった男子もホテルに戻り荷物をまとめて、女子と共にお迎えのバスがやって来た。

「きゃぁあっ!!星河さぁぁんっ!!」
「翔真君!マイクさぁーん!!」
「前園さーん!」
スマホを向けられ写メを撮って、プレゼントを貰ったり、まるでプロ選手並みにバスにまでファンの人達に押し寄せられも浮かれてた者など誰もいなかった。

適度に応えながら乗り込んだバスの中に一歩踏み入れると皆、静まり返っていた。

男女揃って奇しくも愛知に破れたのだから。
皆、蓄積された疲労とやるせなさを無言で押し殺す重い空気が流れる車内でエンジン音だけが響いた。


「匠さん、隣いいですか?」

先に座っていた匠の隣に翔真はやってきた。
「え、ああ。」
珍しくて驚くも受け入れた。

「聞きたいことがあって」
そう切り出され、まぁそうだろうな。と隣にやって来た理由に納得する。

「未茉ちゃんのお兄さんのこと教えて貰えませんか?」

「お前・・・こんな時にこんなとこで試合に関係ない話してマイクに怒られるぞ・・」
死力を尽くしたマイクには誰も声をかけられないくらいピリッとしたオーラが背中きら放たれており、横目で見た匠はひきつるも、

「じゃ、一番後ろいきましょう。」
「いやそういう問題じゃなくて・・」
まさかのKYさに頭痛がしてくるも、言われるがまま一番後方の座席へと移動した。

そんな翔真の後ろ姿を見ながら思った。

(試合の直後でよく他のことが考えられるな。確かにブラウンに次いで点を取ったのはコイツだ。ベストを尽くした様には見えなかったが。
悔しくないのか?
プライドが高いから悔しくてそれを隠すのか…いやそんな玉じゃないよな。
本当にコイツは未茉のことが…)

それにたどり着くとなんだか複雑な思いを隠せなかった。