誰もいないホテルのロータリーで、まとめた荷物の上に未茉は一人腰を下ろしながらママがくるのを待っていた。
時計を見ると試合が終わる頃だ。
見上げた空には雨雲がまた広がってきた。
熱のせいかまだ頭がぼんやりとしていると、
「白石ぃぃい!!!」
突如、目の前から物凄い剣幕でこっちに走ってやってくるユニフォームにジャージ姿の男が飛び込んできた。
「白石ぃぃぃいい!!!」
「ふ…不破!!?」
こちらへ向かってくるとんでもない形相に思わず立ち上がった。
「お前…、翔真に何したぁぁ!?」
試合が終わってすぐに突っ走って来たのか、尋常じゃない汗を体から流し、血管がぶちギレそうな程怒り沸騰で、
ガシッ!!と両腕を捕まれ問い詰めてくる。
「何って何が」
「とぼけんなぁぁあ!!!お前翔真になんかしただろ!!?」
「待て不破、試合は終わったのかよ?」
「終わったにきまってんだろ!!たった今!!東京のボロ負け!!」
「!?」
「俺様はなぁ、今日という日を死ぬほど楽しみにしてたんだ!!!いつかまた公式戦で翔真と戦える日をな!!!」
死ぬほど待ちわびてたんだと豪語する。
「おめぇが勝ったんならよかったじゃねーかよ!!」
面倒くさそうに振り切るが、
「あんなのアイツじゃねぇー!!!俺は本気のアイツと勝負がしてぇのに邪魔したのお前だろ!?」
「あ?!誰がいつ邪魔なんかしたんだよ。」
「俺にはわかんだ!!!アイツがお前のせいで落ち込んでんの!!!」
ズキン、と突き刺さるような胸の痛みを感じて思わず目をそらした。