「白石さんがいるってぇ!!」
「こっちこっちぃ!!」
だが未茉の振り切りも虚しく、どんどん増えて囲まれてくおびただしいファンの数に収拾つかない。

「頼む!離せ!!行かせて!!」

四方八方から捕まれる手を振り払おうとするも、道が塞がれてしまう。
(試合が終わっちまう!!あたしが行かなきゃ、絶対行かなきゃーー)
「やめろ!離せ!!翔真ぁぁ!!!」

思わず、そう叫んだ時、

ーーグイッ!!!
覚えのあるその感触で力強く腕を引っ張られた。
「!?」
未茉は思わずその腕の先の人物を見ると、後ろ姿でも分かった。


「たっ…健!!?」

「行くぞ。」
ずんずんと進んで行くと、警備員が何人か来てファンで塞がれてた道を開けてくれる。

「チケットはこれで。」
関係者入り口にたどり着くと健が見せると、未茉を中へと受け渡し、さっさと立ち去ろうとした腕を掴み、

「健どうしてここに!?」
「お前さっきテレビで空港でこっちに来るってたじゃん。チケットもねぇのにどう来んだって話だろ。」

「それでわざわざ来てくれたのか!?」

「嵐にチケット貰って匠と一緒に見に来てたんだよ。」
「そうだったのかよ!?なんだ・・助かったぁ~テンパったわ。」
どっと疲れが出た未茉はホッと胸を撫で下ろすと、

「じゃあな。」
いつもよりもそっけなく健はさっさと会場を出ようとするので、
「えっ!?なんだよ帰んの?!見ねぇのかよ!?」
足を止めてこっちを振り返り、

「…明徳が勝ってお前と湊が抱き合う姿なんか見る気にはなれねぇな。」

「…!」
「じゃあな。」
ふっと軽く笑う姿が悲しげに見えたのは、気のせいなんかじゃなかった。